日本珍道中その2 区役所の旅

事の起こりは定額給付金のお知らせだった。住民票をそのままにしてあるので銀行口座とIDがあれば1万2000円給付されるという。しっかり給付してもらおうということでずっと使っていなかった銀行口座を再オープンすることにした。

この口座はもう何年も使っていないので印鑑も通帳もキャッシュカードも全てなくなっている。銀行に電話して聞いてみると、今は実家が違うところにあるから違う支店にトランスファーしなくてはならないとか何だかややこしい。しかも丁寧な話し方すぎて、何を言ってるのか全然理解できず。説明があまりにもややこしかったから、結局何が本当に必要だったのが今となっては憶えていないが、銀行へ行くと保証人が一人必要だという。めんどうくさいので違う支店で新しく口座を開いてやっと通帳をもらった。この後すぐに区役所へ戻って国民保険を再開させなければならない。インフルエンザのこともあるし、まだ小さい赤ん坊に何かあってはいけないと思い、今回はどうしても国民健康保険が欲しかったのだ。

銀行で通帳をもらうとき、カウンターの奥で「**様のお名前が・・・ヒソヒソ」と話しているのが聞こえた。何かと思ったら私の苗字の漢字が変わっているとのことだった。私の苗字には“西”が付くのだがその字の縦の2本線がまっすぐ下まで伸びているという。よく見てみると区役所や国など公の機関から届く郵便には全て、その「縦の線が突き抜けた“西”」がいかにも作りましたよ的な漢字で印字されている。

「普通の“西”だと思うんですけど・・・」
「とにかくこの字はコンピューターで打てなかったので、申し訳ありませんが通帳のお名前は手書きにさせていただきました」

見ると几帳面にも突き抜けた“西”で名前が綺麗に手書きされていた。
今更だけど日本人って本当に丁寧だ。この感動を面と向かって伝えられないのが残念だが(恥ずかしいので)、そんなのは当たり前よという顔でそそくさと別れを告げる。

次は国民健康保険の事務所。

自分の番が来たのでこれまでいきさつを話し調べてもらうと、アカルの住民記載はされてないらしい。いきなり住民記載と言われても何なのかわからなかったけれど、とにかくアカルはアメリカ在住のみで日本には住んでいないことになっているという(実際その通りなのだが)。私自身が住民票をそのままにしているので、ニューヨークの日本領事館で戸籍を入れればアカルも同時に住民票に登録されていると思い込んでいたのだ。その記載をするにはまず私の元の本籍があった下京区まで行って手続きをしなければならないという。え~~!電車で山一つ越えていかなあかんのですけど。今日はもう時間がない。

そしてアメリカの出生証明が必要だというが、そんなものもちろん日本には持ってきていない。アメリカのパスポートがあるのだからアメリカ人であることは自明じゃないの?それにニューヨークの日本領事館で戸籍を入れるには出生証明がなければできないのだ。そういうことをと訴えると「んー、いいですよ。今回はそういうことで。」とあっさりスマイルで流してくれた。日本の役所って融通がきかないのかと思っていたけど、けっこうゆるいんだなあと胸をなでおろす。ひょっとしたらあまりこういうケースはないから、適当でもあまりつっこまれないのかもしれないと思った。しかしながら手続きは明日に持ち越し。めんどくさー!始めは1時間程度で終わるだろうと思っていたから、その後京都の街を回る予定だったのに、ハッと気づくともう3時間以上経っている。いつもの如く行動を始めたのが遅かったので、もう夕方になってしまった。

家に電話をすると旦那と父が腹を空かせて待っていた。その日はみんな疲れていたので、仕事から帰ってきた妹もまじって近所の王将で晩ご飯を食べた。王将の餃子ってうまいときはけっこううまい。パリッとしていて後味も軽くビールがすすむ。父が言うには今日は当たりならしい。それから泊まらせてもらっている市内の友人宅に帰ってきて一日は終わった。久しぶりの日本なのに何もできなかったけど、まあいいや。旅は始まったばかり。その晩アカルはいつものように10回起きて泣いた。みんなでお布団に並んで寝るのはおもしろかった。

翌日。

昼過ぎにまた地下鉄に乗って友人宅から郊外の山科まで行き(何のために利便のいい友人宅に泊まらせてもらってるのやら)、旦那とアカルを実家に残して再び区役所へ。今まで払っていなかった保険金を過去2年に遡って払うことでようやく国民保険をもらう。私は日本で無収入だということで保険料は格安だった。ファーストネームとミドルネームが一緒につなげられているアカルの日本名を見ながら感無量。こんなに安く保険証がもらえるなんて日本って何ていい国なんだろう(多くの人はそのことに気づいてないようだが)。おまけに出産一時金と子供手当てまでもらえると言う。そして子供保険は1回の診察が200円だと言う。ああ、もうこのまま日本に住んでしまいたい。


と書くと簡単に手続きが済んだように聞こえるが、実際にはいろんな機関をめぐり、よくわからない帳尻合わせをしてそれなりに大変で、やはり一日があっけなく過ぎてしまった。実家では可哀想なマイケルがアカルをあやしながら今か今かと私の帰りを待っていた。幼子がいるので夜になれば寝なければならず、またもやどこにも行けなかった。父の作った夕食を食べ、そそくさと市内の友人宅に戻る。明日からは広島に行くことになっているのでまたもや忙しくなりそうだ。

実は国民保険を発行してもらうときにも私の苗字の話が持ち上がった。これは普通の“西”と一緒の漢字なんですかねえと聞くと、そうですよ、ちゃんとした漢字です、でも俗字なんですと言って本を見せてくれた。そこにはちゃんと例の字が記載されている。俗字?本来の漢字とは異なるけど習慣で使われていて広く普及している字を俗字というらしい。

「この際に普通の“西”に変更されますか?」
「え?」
「戸籍は実家の方たちからは独立して世帯主になってらっしゃいますし、ご本人さんの意思で登録漢字を変えられますけど」

まあいいかと思って普通の“西”に変えてもらったが、区役所を出てから亡き母がいつもちゃんと例の俗字で苗字を書いていたことを思い出し何だかすごく後悔してしまった。コンピューターで作られた字は滑稽に見えたが、肉筆で書くときは俗字バージョンの方が書きやすいし格好もいい気がする。家に帰って父に聞くと、おそらく母がそういう風に書いていたので役所が気をきかせて俗字バージョンに戸籍を変えたんじゃないかと言う。それならなおさら俗字を引き継ぐべきだったんじゃないかと後悔の念が募った。

でもま、いっか。
いつでも元に戻せるそうだ。

その後いろんな書類を書く際に気をつけて突き抜けないように”西”を書いて、新しい住所をたくさん書いたのでまるで生まれ変わったような気がした。
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by flyingbocian | 2009-09-25 06:31 | 8ヶ月目


異国のNY砂漠で子育てを乗り切るため睡眠を削って綴るもしかして爆笑もしかして涙ほろり日記


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